官邸主導で行われている「新しい資本主義」の議論の第3回のテーマは人的資本である。
事務局の提示するデータによれば、
1)企業の人材投資はGDP比で0.1%未満。先進国中で圧倒的に低く、しかも低下傾向にある。
→そもそも人材への投資余力がなかったからだろうか?
2)大手中小企業ともに、賃金や設備投資などは大きく変わっていないが内部留保は増えている。
→これでは余力がなかったとは言えない。企業の競争力が失われている理由の一つだろう。それはこの20年間、常に指摘されてきたことであるし、その状態は現在も進行している。
これらのことから「人に投資をしないことに対するなんらかの合理性があった」と私たちは考えるべきではないか。それはどのような理由なのだろうか。
「人的資本経営」の議論の前に、その理由を明らかにすることが大切だ。前を向いているようなふりをして指標をこねくりまわしても、意味のある投資は実現しない。さらに遠回りするだけだろう。
巷で言われる防衛費1→2%は贅沢な投資/経費に見える。
参考 事務局データ
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/index.html https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai3/gijiyousi.pdf
10兆ドル(1220兆円)という世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンク CEO は、今年の株主宛の書簡で次のように示した。
・ロシアのウクライナ侵攻によりロシアが国際資本市場から遮断され、これまで進展してきたグローバリゼーション前提が変化し、同社を伸ばしてきたとも言えるグローバル化に終止符が打たれた。
・今後は再生可能エネルギーへのシフトが加速する一方、ESG投資の取り組みは難航する
ちなみに、2020年GDPは米国20兆ドル、中国14兆ドル、日本5兆ドル程度であることから、10兆ドルとはどのような金額であるかがわかる。
・デジタル通貨の役割が拡大するとともに、ウクライナ親交の恩恵を受けるのはメキシコ、ブラジル、米国、東南アジアの製造拠点であろう
(参考:2022.3.35日経新聞夕刊)
経営者が聞くべき声とはどのようなものだろう?最近、経営団体や国の示す提言には首をかしげるような内容、時間的にずれたものが多くなったと感じる。 聞き応えのある声とは中途半端な代弁者からではなく、今を見つめたこのような声ではないのか。
原文→
https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/2022-larry-fink-ceo-letter